ずい道とは?トンネル造りの歴史についてご説明します。
ずい道って何?
ずい道とは、漢字で書くと隧道となりトンネルのことを示します。トンネルは誰でも利用したことがあると思いますが、どうやって作っているか想像できますか?今は重機などによって、トンネルの掘削技術も格段に向上していますが、そうした機械が登場する前は人の手作業によって造られていました。
トンネルの歴史
その歴史はとても古く、紀元前2000年頃にはバビロンで河底を横断するための歩行者用トンネルが造られていました。これが、トンネルの起源とされています。古代ローマやギリシアではたくさんのトンネルが造られましたが、この中には現在でも使用されているものがあります。古代ローマは、トンネル掘削技術を利用して、街道や上下水道を整備していったのです。当然この時代に重機などはありませんから、人の手によって造られていたことがわかりますね。それでは一体どのようにトンネルを造っていたのでしょうか。
両方向掘削によるトンネルの建築
砂場で遊ぶ時に作るトンネルは大体、横方向から掘り進めますよね。そして途中で崩れたりします。これに対して、古代ローマのトンネル掘削はまず、上から穴を掘りました。それも一か所ではなく、数か所掘ります。上から下へ、垂直方向の穴を掘り終えたらその穴の底へ降りて側面を掘っていきます。トンネルをいくつかに分断して、分断した部分を同時に掘り進めていくイメージです。こうすることで、大量の労働者が一度にトンネル掘削の作業に従事することができ、スムーズかつ素早くトンネルが完成するようになっています。また、垂直方向に掘った穴は、そうした作業面でのメリット以外にも、空気孔としての機能や光を取り入れる役割を兼ね備えており、非常に合理的な仕組みになっています。ただ、この技術は古代ローマ人が開発したオリジナルのものではなく、ペルシアから伝わった技術だとされています。
現在も使われているヴィルゴ水道
トンネル掘削技術は、交通路としてのトンネルだけに使われるわけではありません。古代ローマでは既に上下水道が整備されており、その水道掘削のためにもトンネル掘削技術が用いられていました。
ローマの特に都市部の上水道は、地下を流れている場合が多かったです。こうすることによって、戦いでの損傷や動物の死骸などによる管の腐敗を避けることができたと言われています。また、地上を通す場合は水道橋を建設し、高いところを通す場合もありました。水道管自体は、陶器や鉛、青銅が用いられており、張り巡らされた水道管によって公衆浴場や噴水へ水が運ばれていました。噴水は、今だと景観を整えるオブジェのように思いますが、当時は庶民が水を汲みに来てその水を飲むというように実用的なものとして使われていました。一方で、鉛で作られた水道管によって人々は鉛中毒になるなどの健康被害もあったとされ、鉛の人体への影響は当時から知られていました。
こうして作られた水道のほとんどは、ローマ帝国の滅亡と共に消滅していきましたが、今でも使用されている水道があります。それがヴィルゴ水道です。この水道は、2000年経った今でも噴水に水を送っています。
写真はトレビの泉です。ヴィルゴ水道のゴール地点にある人口の泉が場所を替えて今に至ります。
日本のトンネル
このように、ヨーロッパではかなり昔からトンネル掘削技術が磨かれていたことがわかります。一方、日本でのトンネルはどのようになっているのでしょうか。
日本で今も現役として使われるトンネルの中で最古のものと言われているのが、清水谷戸トンネルです。神奈川県にあるトンネルで、電車が通る鉄道トンネルとして使われています。このトンネルは1887年に完成しました。こうした明治期に作られたトンネルは、既に西洋式のトンネル掘削技術を利用しており、日本オリジナルのものではありませんでした。
日本は山がたくさんあるおかげで、古来から多くのトンネルが掘られてきました。用途としては、古代ローマのように水道や交通として利用するものではなく、水田に水を引くためのものでした。このため、規模は大きくなくそれほど難しい技術は必要とされなかったと考えられます。ただ、明治以前の日本のトンネルは300程度確認されており、この中には全長が1㎞を超えるものもあります。こうしたトンネルは、「のみ」や「つち」などの道具を使って、手掘りで掘削されていたと考えられています。
トンネル掘削の事故
さて、これまでトンネルの歴史について少し詳しくお伝えしましたが、昔のトンネル掘削のように手作業で行うものでは、当然掘削中の事故が多発しました。こうした犠牲の中で、現代に通じるトンネルの掘削技術は磨かれてきました。ダイナマイトの発明や蒸気期間の発明によって、掘削機が開発されトンネル掘削技術も格段に進歩し、現在に至ります。
まとめ
今回は、トンネル掘削作業について触れる前段としてトンネルの歴史についてご紹介しました。こうして、建築技術の歴史を詳しく見ていくのも、また違った面白さがありますよね。これを機会に、自分が関わる作業の歴史について調べてみるのも面白いかもしれないですね。
さて、次回はこうして培われたトンネル掘削作業について、現在の様子や必要な資格についてご紹介していきます