騒音は人体に有害?騒音作業従事者労働衛生教育ってなに?②
そもそも騒音が問題になり始めたのはいつごろかご存知ですか?騒音自体はずっと昔から存在していました。例えば、馬車の走る音はで古代からローマ人は騒音被害に遭っていたといいます。現代につながる産業による騒音といえば、高度経済成長です。この時期には騒音を含めた公害が社会問題として大きく取り上げられるようになりました。このため、日本では1968年に騒音規制法が制定されたのです。
労働安全衛生規則における騒音対策
労働安全衛生規則第588条では、下記の屋内作業場については、著しい騒音を発するとして作業環境測定を行うべきとしています。
一 鋲(びょう)打ち機、はつり機、鋳物の型込機等圧縮空気により駆動される機械又は器具を取り扱う
業務を行なう屋内作業場
二 ロール機、圧延機等による金属の圧延、伸線、ひずみ取り又は板曲げの業務(液体プレスによるひ
ずみ取り及び板曲げ並びにダイスによる線引きの業務を除く。)を行なう屋内作業場
三 動力により駆動されるハンマーを用いる金属の鍛造又は成型の業務を行なう屋内作業場
四 タンブラーによる金属製品の研ま又は砂落しの業務を行なう屋内作業場
五 動力によりチエーン等を用いてドラムかんを洗浄する業務を行なう屋内作業場
六 ドラムバーカーにより、木材を削皮する業務を行なう屋内作業場
七 チツパーによりチツプする業務を行なう屋内作業場
八 多筒抄紙機により紙を抄(す)く業務を行なう屋内作業場
九 前各号に掲げるもののほか、厚生労働大臣が定める屋内作業場
これに対して第590条では、6ヶ月以内ごとに1度騒音レベルを測定しなければならないということが記載されています。
騒音障害防止のためのガイドライン
労働安全衛生規則おいては、主に屋内作業場の指定と測定について定められています。一方で、屋外での騒音現場などについてはこちらの「騒音障害防止のためのガイドライン」に示されています。屋外作業場での測定は、施設・設備・作業工程・作業方法などを変更した際に、その都度実施するよう書かれています。測定結果に応じて、保護具の使用などによる対策が求められます。
騒音対策の保護具や方法について
保護具
必要に応じて使用を求められる保護具には様々な種類があります。例えば、イヤーマフはヘッドフォンのような形をしており、音をしっかり遮断する効果があります。耳にあたる部分にはクッションがついていますが、このクッションの中には発砲材が入ったものや、液体が入ったものがあります。それから、耳栓です。耳栓にも使われる素材に種類があって、例えば市販のものだとゴムやプラスチック製のものでしょうか。一方で、グラスウールやウレタンフォームといった素材を耳栓として利用することもあります。
対策方法
騒音に対する代表的な対策方法についてご紹介します。これは、先程紹介した騒音障害防止のためのガイドラインに記載されています。
分類 | 方法 | 具体例 |
騒音発生源対策 | 発生源の低騒音化 | 低騒音型機械の採用 |
発生原因の除去 | 給油、不釣合調整、部品交換など | |
遮音 | 防音カバー、ラギング | |
消音 | 消音器、吸音ダクト | |
防振 | 防振ゴムの取り付け | |
制振 | 防振材の装着 | |
能動制御 | 消音器、吸音ダクト、遮音壁など | |
運転方法の改善 | 自動化、配置の変更など | |
伝ぱ経路対策 | 距離減衰 | 配置の変更など |
遮蔽効果 | 遮蔽物、防音壁、防音室 | |
吸音 | 建物内部の消音処理 | |
指向性 | 音源の向きを変える | |
能動制御 | 消音器、吸音ダクト、遮音壁など | |
受音者対策 | 遮音 | 防音監視室、囲い |
作業方法の改善 | 作業スケジュールの調整、遠隔操作など | |
耳の保護 | 耳栓、イヤーマフ | |
能動制御 | 消音ヘッドホン |
騒音の発生の仕方や音源に対して、具体的な対策方法が示されています。
騒音作業従事労働者労働衛生教育の内容
<学科>
・騒音の人体におよぼす影響(1時間)
・適正な作業環境の確保と維持管理(50分)
・防音保護具の使用の方法(30分)
・改善事例および関係法令(40分)
学科のみの講習で、受講時間は3時間程度と少ない時間になっています。また、費用も1万円を切るところが多く、それほど高くない印象を受けます。
一度失った聴力は戻らない
前回、騒音現場における作業で発症した騒音性難聴は労働災害に認定されるという話に触れました。この難聴の初期症状を自覚するのは難しいという話もしましたが、薬物療法の有効な期間は発症から1週間と言われています。治療が難しいとされる難聴ですから、早期発見と早期治療が大切になります。そして最も大切なことは、やはりそうした労働災害が起こらないように、専門的な知識を身につけ、未然に防ぐということでしょう。85dB以上の騒音に8時間以上さらされる期間が長期間続くことで、騒音性難聴が発症しやすくなります。もちろん事業所や現場ごとに管理されているとは思いますが、労働者自身がそうした知識をもって作業することで、自分の身を守ることにつなげていって欲しいと思います。