開業8年!東京スカイツリーってなんのために建てたの?
前回、スーパーゼネコンのご紹介をした時に、大林組の代表的な施工建造物の中に東京スカイツリーがありました。2012年に完成してから、8年程度しか経っていませんが、スカイツリーは東京のシンボルとなり、周辺地域に新たな活気を生み出しました。さて、そもそもこのスカイツリーは何のために建てたのか、その経緯をしっかりとご存じの方はいらっしゃるでしょうか?今回は、東京スカイツリーに関わる建築のお話をしていこうと思います!
そもそも電波塔!
目次
東京スカイツリー以前に、東京には東京タワーという立派なシンボルがありますよね。一般の人たちにとっては、あれはシンボルであり観光名所!というイメージが強いですが、そもそも東京タワーも東京スカイツリーも電波塔です。電波塔というのは、その名の通り電波を送信するための設備の一つです。わざわざあんなに大きな設備として建てるのにも理由があって、周辺の建造物によって電波が遮断されてしまうのを防ぐためなんですね。特に東京では、高層ビルが増え、背の高い建物が多くなってきていたため、それを超える高さの電波塔が必要であったという背景があるのです。他にも、観光名所になっているような電波塔は世界中にあります。エッフェル塔もその一つですね。国内で言うと、さっぽろテレビ塔・福岡タワー・名古屋テレビ塔などが挙げられます。
構想は2000年頃から
こんなにも大きな電波塔が必要になった背景には、携帯電話の爆発的な普及が一つ考えられます。当時、携帯電話ではワンセグが流行りましたよね。誰もが、どこでもテレビを観るというような時代になったわけです。そして最も大きな要因となったのは、地上デジタル放送の開始です。そこで、この頃から首都圏では各地で新タワーの誘致活動が行われるようになったのです。なぜなら、高層ビルの乱立によって、東京タワーの本来の役割が果たせなくなる恐れがあったからです。このタワー建設の話が大きく進むきっかけとなったのが、NHKと民間テレビ局5局による「在京6社新タワー推進プロジェクト」というものです。この計画で、600メートルものタワーの建設を求める声が明確に上がったわけです。
在京6社新タワー推進プロジェクト
ちなみに、民間テレビ局5局というのは、下記です。
・日本テレビ放送網
・東京放送
・フジテレビジョン
・テレビ朝日
・テレビ東京
なるほど、という感じですね。ここにNHKが加わって、新タワーの建設について話し合っていました。先ほども申し上げた通り、地上デジタル放送の開始によって高層ビルが立ち並ぶ首都圏では、電波の遮断率が高く、本来の映像を届けられないという可能性があったんですね。また、携帯電話などを使ったワンセグの利用を増やすためにも、安定した電波の供給のためにはより高いタワーが必要だという共通の見解を持っていました。それが、なぜ600メートルなのかと言うと、当時最も高い建築物であったカナダのCNタワーが553mだったからです。どうせ高いタワーを建てるなら、世界一のタワーにしよう!ということですね。当時の環境ですと、450m以上であれば良好な電波送信環境を保てるという見解でしたが、そこまで高いタワーを建てるならあと150m高くしちゃおう!というのはなんとなくわかりますよね。
このプロジェクトは後に合意され、東武タワースカイツリー株式会社が事業主体となり、約500億円の事業費と約400億円の建設費をかけて建設されることとなったのです。設計・監理は日建設計が行い、施工は大林組が行うこととなりました。
ちなみにこのプロジェクトの発足は2003年12月でした。その後、タワーの誘致先を決め2005年2月に放送事業者と墨田区に新タワー事業のスタートが表明されています。
さらに余談ですが、こうした新タワーを建てる以外にも、東京タワーを30m伸ばすという案もあったのです。
なぜ大林組なの?
さて、ここで気になるところだと思うのですが、なぜ東京スカイツリーの施工は大林組が担うことになったのでしょうか?スーパーゼネコンが5社ある中で、大林組に白羽の矢が立ったのは、高層ビルの建築実績が特別高かったことです。そもそも、設計を担当した日建設計は東京タワーの設計にも携わっていました。こうした実績もあって、日建設計は選ばれたのですが、大林組はそういう実績と共に大変すばらしい提案をしたとされています。特に、発注者の意向と要望をふんだんに取り入れるという姿勢が評価されたようです。このため、東京スカイツリーは大林組の単独施工となりました。
日建設計ってどんな会社?
株式会社日建設計についても少しご紹介しておきましょう。名前の通り、建築設計事務所である日建設計は、1900年に創業しています。やはり長い歴史があるようですね。元々は1900年に設立された、住友本店臨時建築部がスタートとなります。これまで見てきた会社の発足とは少し異なる印象です。経緯が難しいので省略しますが、1970年に現在の株式会社日建設計になっています。後にできた新会社に、元々のあった建築部門が譲渡された形と言えば、わかりやすいでしょうか。日建設計は東京タワー・福岡タワーの設計にも携わっており、電波塔の設計は得意分野です。他には、大阪ドームやセントレア、東京ドーム、みなとみらい21などの数々の建築物や都市・地域計画に携わっています。
東京スカイツリーの特徴とは?
こうした経緯を経て完成したスカイツリーは634mとなり自立型の電波塔にでは世界一を誇る高さとなりました。このスカイツリーにはどんな技術が使われているのでしょうか、全てではありませんが一部ご紹介させていただこうと思います!
<ナックル・ウォール工法>
これは、大林組によって開発された技術です。高さ634mものタワーですから、基礎部分は非常に重要になるのは自明の理です。ところがスカイツリーの場合、基礎の幅が高さに対してとても狭いとされています。このような幅の狭い基礎でも高い建物を支えることができるのが、大林組のナックル・ウォール工法です。スカイツリーの土台部分は三角形になっていますが、これを支える部分も3点になっています。その3点に上下方向の力に耐える突起がついた杭であるナックル・ウォールがあるのです。さらに、そのナックル・ウォールどうしをつなぐ強大な壁が地中連続壁杭と呼ばれる、大林組の独自の技術です。要するに、とても雑に説明するとめちゃくちゃ揺れに強い杭と壁を合体させた、すごく強い基礎ということになります。通常杭に、突起はついていないものですが、突起がついているものを使うことによって上下の揺れにより強くなるというメリットがあります。ただしこれは、地中連続壁杭との合わせ技になります。
https://www.obayashi.co.jp/chronicle/technology/c3s1.html
こちらのサイトを観ると、より詳しくナックル・ウォール工法について知ることができますので、是非ご覧になってみてください。また、サイトの下の方にナックル・ウォール工法の施工手順の動画が上がっているのでそちらもご覧になってみてください!
まとめ
今回は、東京スカイツリーが建設された経緯と、ほんの一部ですが使われている技術についてご紹介しました。建設されてから8年経って改めて振り返って、スカイツリーについて知らないこともいっぱいあったのではないでしょうか?歴史ある会社の蓄積された技術と知恵が創り上げた新たなシンボル、東京スカイツリー。これからもたくさんの人に愛されていって欲しいですね!
また、こうした建築物に関われる可能性が高まるのが、スーパーゼネコンなんだと改めて認識することになりますね。