鏡面研磨の魅力!日本が誇るiPod裏面の研磨技術とステンレス研磨について紹介します。
金属加工・表面処理の老舗
目次
新潟県には日本が誇る、金属研磨の老舗があります。昭和37年に創業した『小林研業』は、時代の変化に応じて、高度な技術を要する製品の研磨・加工を手掛けています。この小林研業を一躍有名にしたのは、動画にもある通り、iPod裏面の鏡面研磨です。当時、iPodの裏面は美しい鏡面仕様となっていましたが、これが小林研業の技術によって支えられていました。そもそも、小林研業はAppleとiPod以前からお付き合いがあったのだとか。Appleの仕事は当時からとてもレベルが高く、対応できる技術を持っている職人さんがあまりいない状況の中、これを引き受け追究し、技術を確立していったのが小林研業でした。
Apple社は基本的に、そういった関連工場の公開はしていないのですが、小林研業の場合はこれを公表してもよいという許可が下りるほどでした。当時、大きく取り上げられ、テレビでも何度も特集が組まれました。
動画をご覧いただけばわかると思いますが、この美しい鏡面仕様はスティーブ・ジョブズが認めた日本の技術です。この技術を生かして、現在はこうしたステンレスカップの販売を行なっています。
画像引用:https://kenma-kobayashi.co.jp/product/
ステンレスの研磨
そもそも、ステンレスの研磨は非常に難易度が高いとされています。ここで、ステンレス研磨について少しご紹介します。ステンレスと言えば、日常の中ではキッチンに使われていることが多いかと思います。また、腕時計の裏側にも利用されていることが多いですね。
研磨職人の技術向上の段階でも、ステンレス研磨は上の方に位置しています。まずは、鉄などの粗い材質の研磨からスタートし、ステンレスに行きつき、最後に鏡面仕上げ、というようなステップアップが一般的です。
鏡面加工の種類
実は、鏡面加工には種類があります。鏡面加工を施して、その後の加工(ヘアーライン加工やアルマイト処理など)をしやすくするというものです。一方で、見た目を美しく仕上げるための鏡面加工もあります。小林研業のiPodの裏側やステンレスボトルなどは、こちらに該当します。
ステンレス研磨の方法
ステンレス研磨の場合、一般的には高速回転する研磨機を用いて研磨を行なっていきます。小林研業でも、高速に縦回転するベルトコンベヤータイプの研磨機を利用して研磨しています。こちらの動画は、小林研業の公式チャンネルに掲載されている研磨の様子です。
ご覧の通り、一つひとつが手作業で行われていることがわかります。
様々な加工技術がどんどん機械化されていく中で、こうした加工物の美しさは手作業ならではのものがあります。今後、更なる便利な機械が生まれていこうとも、基本的には細かな作業は人の手によることは変わらないと考えられます。したがって、こうした技術を身につけることは今からでも全く遅くなく、研磨作業に魅力を感じる若者が自ら門戸を叩くこともあるようです。
MADE IN TSUBAMEの魅力
先程からご紹介している、小林研業の他にも新潟県燕市は金属加工の集積地として有名です。実は、江戸時代初期から和釘の産地であり、時代の変化と共に生産する品を変えてきたのです。そもそもは、洪水で被害を受けることの多かった農家が副業として始めた和釘づくりですが、これが燕市の金属加工の歴史の始まりとなりました。歴史ある金属加工の産地、燕市ではひとつの製品を完成させるために多くの工程を分業によって行なっています。これが、町工場を支える一つの特徴でもあります。
先にご紹介したタンブラーも、小林研業で研磨をするまでに、ステンレスの平板をプレスして円形にする工程や、カップの形状に加工する工程を別の加工工場で行なっています。こうした一連の流れを経て作られた製品は、「TSUBAME KENMA FACTORY」ブランドとして販売されています。
次世代へつなぐ研磨技術
こうした技術を絶やさないために、技術伝承のために燕市磨き屋一番館が建設されました。ここでは、技能研修性を受け入れて、3年をかけてその研磨技術を習得していきます。また、研磨技術の体験講座も開催しており、一般の人でもその研磨作業を体験することが可能となっています。
地域全体の取り組みによって、燕市の金属加工技術は次世代へとつながれ、日本の研磨加工技術を支えていくでしょう。
まとめ
小林研業を中心として、研磨技術の素晴らしさが少しでも伝われば幸いです。燕市に行く機会があれば、この技術を是非体験してみて欲しいと思います!
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