粉じん作業は危険がいっぱい!作業従事のための資格について紹介
粉じん作業ってなに?
目次
粉じんとは、大まかにいうと物を砕いた時に飛散する物質のことを指します。大気汚染防止法では、健康被害が起きる恐れのある粉じんを特定粉じんとし、それ以外を一般粉じんとして分類しています。以前紹介したアスベストは、この特定粉じんに分類されます。粉じん作業は、こうした粉じんに関わる作業のことで、具体的な作業についてはリンクをご覧ください。ちなみに、下記の粉じん障害防止規則は労働安全衛生法施行令に含まれます。
粉じん障害防止規則 別表第一
https://www.jaish.gr.jp/horei/hor1-2/hor1-2-37-m-2.html
鉱物を掘削したり粉砕するなどの仕事や石炭を扱う仕事。あるいは、金属を削ったり溶接したりする仕事などが多くなっています。
こうして、粉じん作業に関して細かく規則が設けられているのは、それだけ危険度が高い上にかつて粉じん作業による健康被害が実際にあったからです。また、粉じん作業に関する法令は他にもあり、じん肺法・大気汚染防止法・作業環境測定法などが挙げられます。興味がある人はぜひ目を通してみてください。
・じん肺法
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74164000&dataType=0&pageNo=1
・大気汚染防止法
https://www.env.go.jp/air/osen/law/
・作業環境測定法
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=74156000&dataType=0&pageNo=1
粉じん作業の危険とは
粉じん作業の際に起こり得る健康被害とは一体どのようなものなのでしょうか。
じん肺
粉じんを体内に吸入してしまうと、即座に大きな健康被害をもたらすことはありませんが30~40年後に症状を発症することがあります。じん肺と呼ばれるそれは、粉じんが肺の内部に入り込み肺胞で沈着するというもので、肺の中で筋繊維増殖が起こり、呼吸が困難になっていきます。このため、症状として咳・痰・ぜんそく・息切れなどが起き、肺炎や呼吸器感染症にかかるリスクが高まります。また、結核や肺がん、気胸などと合併して起きることもあります。現在ではじん肺に関する知識の高まりと法整備なども受けて、粉じん作業車のじん肺罹患者数は減少していますが、昭和50年代にはかなりの数のじん肺患者が発生していました。残念ながら、じん肺に対しての治療法はまだ確立されていないのです。
中毒・アレルギー
じん肺は、一般的に無機粉じん(無機物によって構成される粉じん)に分類される粉じんによって発生するとされています。しかし、粉じんには有機粉じんというものもあって、これは有機物から構成されるものを指します。例えばこうした粉じんの中には、鉛やカドミウム、マンガンなど人体にとって非常に有害な物質も含まれるのです。不適切な粉じん作業によって、こうした物質による中毒症状やアレルギーが発生するリスクが高まります。以下の病気は、有機粉じんを吸い込んだことによって発症した事例のある病気です。
・気管・気管支過敏症
⇒外因性ぜんそく・アレルギー性アスペルギルス症・腺筋症
・肺胞過敏症
⇒農夫肺・キノコ労働者肺・さとうきび肺・ハト飼育者肺・楓樹皮病・下垂体薬病・麦芽労働者肺・米杉症・屋根ぶき慢性肺疾患・コクゾウ無視過敏症・鶏肥過敏症・ホリタケ症
粉じん作業による健康被害の実際
粉じん作業による健康被害を受けて、日本では様々な訴訟が起こされてきました。今回は、筑豊じん肺訴訟について紹介していきます。
筑豊じん肺訴訟とは
1985年から1987年にかけて、福岡県筑豊地方で炭鉱員として働いていたじん肺患者や遺族が国と石炭大手6社を相手に、約55億円の損害賠償を求めて提訴しました。その後18年という長い年月をかけて裁判は行われ、2004年に国の責任を認める形で終わりました。
筑豊地方だけでなく、日本全国で粉じん作業に従事していた人たちが長い年月を経てじん肺を発症した例は多く、作業環境が整っていなかったことがうかがわれます。こうした被害を受けた人たちの努力があって、今日じん肺にかかるリスクが軽減されるようになってきたのです。
粉じん作業に関わる特別教育について
こうして、危険をともなう粉じん作業に従事する際には特別教育を受ける義務があります。特別教育の内容は以下の通りです。
<学科>
・粉じんの発生防止および作業場の換気の方法(1時間)
・作業場の管理(1時間)
・呼吸用保護具の使用の方法(0.5時間)
・粉じんに係わる疾病および健康管理(1時間)
・関係法令(1時間)
費用は、テキスト代を含めて10000円程度となっており、学科のみの受講で4.5時間とされています。学科のみですので、オンラインで受講してもよいかもしれないですね。
まとめ
粉じん作業に関して、非常に危険がともなうということをお分かりいただけたでしょうか。特別教育を受ける意義とは、作業に従事するための資格を得るということも含まれますが、それ以上に正しい知識をもって自分の身を守るということも含まれています。作業用具や環境を整える責任は会社にもありますが、作業に従事するのは自分自身です。じん肺についての知識やこれまでの歴史を知らずに作業に従事して、数十年後にじん肺を患ってしまうのはとても悲しいことです。自分の身を守ることもしっかりと含めて、こうした講習を受けていきたいですね。