粉じんの危険性と、それらの発生売る作業ばしょで必要な資格は?

粉じんというものは何なのか、アスベストとの違いやそれらの危険性を総合的に解説する。
- 粉塵(ふんじん)とは
・粉じんとは粉末状になり空気中に漂う細かい個体粒子の総称。物質の名前では無いため、例えば小麦粉でも塵状になり空気中になって漂えば粉塵という扱いになる。
・煤煙(ばいえん)との区別
物質の燃焼時に発生する微細な粒子を煤煙という。特に、「すす」のことを煤塵(ばいじん)という。
- 石綿(アスベスト)とは
・石綿とは、天然にできた鉱物繊維のこと。粒子が極めて細かく熱や酸、アルカリなどに強く丈夫であり価格も安いため様々な工業製品に利用されていた。耐火性、断熱性、防音性、絶縁性にすぐれていたため主に建材に利用されていたが、発がん性物質であることがわかり現在では原則製造・使用が禁止されている。ちなみに、アスベストを発見したのは江戸時代の有名発明家平賀源内である。彼はこれを使い燃えない布として「火浣布(かかんふ)」を作成したとされている。
- 粉塵と石綿の違い
・結論から言うと、「粉じん」=「石綿」ではない。粉じんはあくまで粒子の小さい塵状の物質である。石綿は鉱物由来の繊維である。ただし、この粒子が非常に小さいために粉じんになることがある。このように石綿を含む粉じんは特定粉塵に指定されている。
- 粉塵の危険性
粉塵の多い場所では人体に対して明確な危険がつきものだ。そのため粉塵作業では特別教育による資格が必要になる。そこで、まず初めに粉塵が引き起こし得る危険を紹介する。
・粉塵爆発(ふんじんばくはつ)
ある空間における粉塵の濃度が一定のレベルを超える状態で火花などが原因で発生する爆発のこと。
粒子ひとつあたりの体積が小さくなるにつれて、体積に対する表面積の割合は増加していく。それにより、小さな粒子(粉塵)は燃焼しやすくなっている。このような理由から、粉塵の濃度が特定のレベルの場所での火器の使用や、火花の発生により一気に燃焼が拡大し爆発が発生してしまう。(酸素濃度の関係により、濃度の高すぎる場所でも発生しない)
粉塵爆発と聞いたら炭鉱での事故をイメージする方が多いかもしれないが、小麦粉・コーンスターチ・アルミニウム等の金属粉などでも発生する。
実際に近年の日本でも、2010年北海道苫小牧市の飼料会社工場内で溶接作業中に粉塵爆発と見られる爆発事故が発生している。
・じん肺の危険性
粉塵を長期間吸い続けていると、「じん肺」を発症してしまうリスクが高まる。
主な症状は咳、痰、ぜんそくなどで、あるが、肺炎など呼吸器系の感染症にもかかりやすくなってしまう。
じん肺の発症は粉塵を吸い込んだ直後ではなく数十年経ってからである場合が普通である。そしていちど患ってしまうと完治することは無い。
じん肺の予防をするために正しい知識を身につけることは必須で、作業現場に応じて粉塵の原因となる物質とそのサイズを把握し、適した作業道具を使用する必要がある。特に、粒子の細かいもの、金属由来の粉塵は毒性が強いため注意が必要である。
- 粉塵作業に関する資格
・粉塵のある場所は人体に多大な悪影響を及ぼす。
工事現場などには多くの危険が潜んでいるためできるだけ危険性を排除する必要がある。そのような危険性を減らすために労働安全衛生法が定められおり、粉じん作業に関しては特定粉塵作業者という資格が定められている。
・特定粉塵作業者
特定粉塵作業者とは、粉じん作業特別教育を修了した者に与えられる資格である。この資格を有する者でないと粉じんの発生する(特定の条件を満たした)現場で作業することはできないと定められている。
・粉じん作業の具体例
・トンネル内で動力を用いてコンクリートや岩石などを破砕する現場
・屋内の岩石や鉱物を動力で裁断し、彫る場合
・研磨剤を屋内で用いる場合
など。換気の悪い場所で岩石を粉砕するような作業の多くが粉じん作業に該当する。
一方事業者にも、粉じん作業特別教育を修了させなければいけないという義務が定められている。
- 資格の取得方法
【概要】
この資格は免許制ではなく特別教育を受講すれば基本的にだれでも要件を満たすことができる。
【受講資格】
満18歳以上
【受講内容】
粉じんの発生防止および作業場の換気の方法:1時間
作業場の管理 :1時間
呼吸用保護具の使用の方法 :0.5時間
粉じんに係わる疾病および健康管理 :1時間
関係法令 :1時間
合計 :4時間30分以上
【受講場所】
各自治体の定める教習所などで受講可能。ウェブ上受講することも可能な教習所もあるので、自分に合った受講スタイルを選ぶ必要がある。
【受講費用】
6,000~10,000円程度
教習所により異なる。
- まとめ
粉じんというものは、その場で人体が危険にさらされることがあまりないのでつい対策を後回しにしてしまいがちかもしれない。しかし、数十年後に苦しむのは自分であり周囲の人も苦しめることになってしまうこともあるかもしれない。明確に分かっている潜在的な危険はしっかりと排除して、自分の身はしっかりと自分で守ることが必要だ。そのために特定粉塵作業者の資格を取得しておく