災害に特化!地すべり防止工事士の資格についてご紹介します!
数多の建築関係の資格についてご紹介してきましたが、今回はあまりメジャーではなり「地すべり防止工事士」の資格についてご紹介していきます。
地すべりとは
地すべりという災害は、傾斜のある地盤の土が下方向へずれていってしまうことを指します。このため、その地盤状にある建造物なども一緒に下方へずれてしまうことがあります。この現象には、地下水が関係しており、斜面において水分を多く含む地盤はこうした災害が起きやすくなっています。元々、日本の地盤は地質的に弱い場合が多いのですが、台風や豪雨、地震などの自然現象によって、毎年各地で地すべり被害が出ています。
画像出典:国土交通省公式HP https://www.mlit.go.jp/mizukokudo/sabo/jisuberi_taisaku.html
胆振東部地震での地すべり
2018年に起きた、北海道胆振東部地震では、地すべり被害が多発しました。この地震は、北海道厚真町を中心に大きな被害をもたらしましたが、その中でも地すべり被害は深刻で、その被害箇所はすべて合わせて6000箇所にものぼるとされています。
地すべりは未然に防ぐことができる?
こうした災害を未然に防ぐために、様々な工事が行われています。そのうちの一つが、アンカー工と呼ばれる工事です。アンカー工は、地すべりが起きると想定される地盤の地中深くに、アンカーを打ち込むことでその上に立つ建造物を固定するという工法です。
こちらの動画では、アンカー工の模型実験を行っています。ペットボトルの水は、豪雨と想定できますね。こうした大量の水によっても、地盤はゆるまず傾斜の上の建物が維持されていることがわかります。
こちらの動画では、実際の地すべり対策工事の様子を見ることができます。ドローンによって俯瞰的に撮影されていますね。この動画では、複数の工法を組み合わせて工事をしていることがわかります。こうした工事を設計するためには、当然地すべりに関する専門的な知識や技術が必要となりますね。
地すべり防止区域とは
そもそも、地すべりが起きることが想定されている地域では、建築や工事が制限されることがあります。それが、地すべり等防止法によって定められている「地すべり防止区域」です。この区域に設定されている場所では、下記の行為が制限されることになっています。
・地下水に関する行為
・地表水に関する行為
・法切または切土に関する行為
・施設の新設または改良に関する行為
・その他、地すべりを助長し、または誘発するおそれのある行為
基本的には、こうした場所でわざわざ住宅を建てることはないと思いますが、万が一建てる時には都道府県知事の許可が必要となっています。地すべり防止区域に指定されると、不動産価値が下がるため、雇地が安くなるという利点もあります。ただ、人が住むには危険なため、原則として居住誘導区域に含まないこととすべき区域にあたります。ちなみに、地すべり防止区域に指定された場合は、現地に標識が設置されます。
地すべり防止工事士とは
さて、こうした地すべり防止工事に関わる資格として、「地すべり防止工事士」という資格があります。あまりメジャーではないので、初めて聞いたという方もいらっしゃるのではないでしょうか?
地すべり防止工事士とは、その名の通り「地すべり」を防止するための専門的な知識と技術を備えた、プロフェッショナルです。この資格を取得し、地すべり防止工事士として登録するためには、一般社団法人斜面防災対策技術協会が実施する「登録地すべり防止工事試験」に合格する必要があります。
地すべり防止工事士は、工事の設計のみならず知識の調査や地下水に関する調査などを行うことができる必要があります。このため、地質調査の知識も必要となりますね。また、地すべりの現場経験が必要となり、その豊富な現場経験によって、迅速な判断が求められることになります。
<受験資格>
・地すべり防止工事等に関する5年以上の実務経験を有する者。
・この5年以上の実務経験の内、1年以上は指導監督的実務経験年数が含まれること。
※地すべり防止工事等というのは、地すべり防止工事又は調査・設計業務のことを指します。
※指導監督的実務経験年数とは、調査解析・工法などの計画設計、施工および管理などの管理技術者又は工事主任等として、部下を指導又は監督し、施工管理などに従事した実務経験年数のことを指します。
<試験内容>
一次試験(筆記試験)
・地すべり防止工事を施工する者が有すべき地すべりに関する基礎的知識
一般知識
関係法令
調査
計画
設計
施工
管理
・地すべり防止工事を的確に施工するための専門的知識
調査
計画
設計
施工
管理
二次試験
・口頭試問
一次試験12300円、二次試験7200円とそれぞれ費用がかかります。両方合格した者が地すべり防止工事士の資格を得ることができ、登録されます。この登録料が別途、10200円かかります。また、登録後は5年ごとの更新が必要となります。
まとめ
日本は災害対策のために様々な工事を行っていく必要がありますが、地すべり防止工事士はその内の一つに関わる重要な資格です。こうした専門性を身に着けていくことも、土木工事業界でのキャリアアップにつながっていくことでしょう。