水中都市建築に関わりたい!水中掘削には「潜水士」の資格が必要です。
建築の世界は、陸上だけにとどまらず水中にまで及ぶことをご存じですか?今回は、水中掘削や水中で使える重機についてご紹介していきます。
水中掘削とは
目次
文字通り、水の中で地面を掘削するなどの作業です。一体どういう時に水中掘削が行われるのでしょうか。例えば、海峡や川を渡る橋の足元が水中にある時、防波堤の建設、海底トンネルの建造などの場合は、水中で作業することになるということが想像しやすいですよね。水中の地面を掘削した時、まさか人が潜ってスコップで掘るなんで無茶です。こういう時に活躍するのが、水中用の重機なのです。
水中で活躍するバックホウ
こちらの動画を見てください。なんとも愛らしい黄色のバックホウが、水中でアームを動かしています。まるで、重機の水族館のような光景ですね。こういった水中バックホウは、人が搭乗して操作する場合と遠隔操作する場合があります。人が搭乗する際には、操作者には潜水士の資格が必要となります。後ほど、こちらの資格についてもご紹介しますね。
最新の水中掘削機
https://built.itmedia.co.jp/bt/articles/2007/20/news047.html
これは、バックホウという形態ではなく、「水中掘削機」というジャンルの機械となります。形状がロボットみたいで面白いですね。この機械を使うと、これまで難しかった方法での水中掘削が可能となるだけではなく、人が搭乗して作業しなくて済むので安全面でも評価が高いものとなっています。こうした機械の利用によって、人的・費用的なコストを削減することができます。
水中建築の未来
水中の建築といえば、橋やトンネルなどの交通機関としての建築のイメージが強いですが、将来的には人が住めるような建造物を海中に造ろうという夢のような構想が話題になっています。しかもこの計画は2030~2050年に実現目標とされていて、かなり近い未来の話となっています。それだけ、技術が進歩しているとも言えますね。
https://www.shimz.co.jp/topics/dream/content01/
これが、清水建設の深海未来都市構想「OCEAN SPIRAL」です。海底に眠る資源は想像以上にたくさんあります。これらを活用して、新たな発電やエネルギーを開発するとともに、それらを活用して人が住める環境を構築するのが、このオーシャンスパイラルです。構想段階では、5000人規模の人が住めるように想定されているようです。さて、この構想の中で語られる魅力的なポイントをまとめていきましょう。
<地球温暖化を解消?二酸化炭素からエネルギーをつくりだす>
地球温暖化について、建築業界では様々な取り組みによって消費・発生エネルギーを抑えたり環境に配慮したりしています。そんな中、オーシャンスパイラルでは、なんと地球温暖化の原因となる二酸化炭素をエネルギーとして活用するという構想が含まれているのです!理論的には、二酸化炭素から天然バイオガスを生成することが可能で、関係する研究が様々な分野から進められているようです。これが実現すれば、非常に画期的で人類の新しい生活スタイルが実現していくに違いありません。元々、海底に埋まっているメタンハイドレートという新たなエネルギー源は、二酸化炭素が長い時間をかけて深海で形を換えたものだとされています。その長い時間というのが途方もなく、なんと5万年!そんなの待ってられないですよね。この5万年をなんと、5時間に短縮する技術が研究されているのだとか。これってすごいことでは…?
<台風や地震の影響を受けない「安全」な都市>
日本に住む人たちにとって、陸上で生活していると必ずといっていいほど直面するのが台風や地震による被害や不安です。これから先も、台風や地震が無くなることはありませんし、頻度の差はあれど、どこに住んでも同じような不安が付きまといますよね。これを一層するのが、オーシャンスパイラルなんです。台風時には、スーパーバラストボールというものによって人々が住む部分の上下運動を制御し、その影響を吸収することができます。海中に住む、そして建造物が球体となると、波による揺れが心配かと思いますが、こうした装置によって人々が陸上で暮らすのと変わらない安定感をもたらします。
これだけで、なんだかわくわくしてきますよね。しかもこの建造物は、新しい建築資材を用いるというよりは、従来の資材を活用して建てられます。みなさんのなじみ深いコンクリートというやつです。このコンクリートはペットボトルリサイクル材を活用した樹脂コンクリートを利用することを想定しています。オーシャンスパイラルが現実のものとなれば、陸上に住む人たちも海底旅行を楽しむことができるようになります。このため、この構造物の中にはきちんとホテルなども建築される予定です。
潜水士の資格を取ろう
さて、話は変わってオーシャンスパイラルの建築に関わりたい、水中の建築作業に従事したいと思った時に必要な資格は、重機を運転する際には陸上と変わらない資格が必要ですし、プラスして潜水士の資格が必要です。ここで、潜水士の資格はどうやって取るのか確認しておきましょう。
<潜水士とは>
潜水士とは、海や湖などの水中に潜ってその中で作業する人を示す「職名」です。これだけで仕事が成り立つのですね。一般的に、趣味で潜水するダイバーなどのイメージが強く、もちろんこれにも該当します。また、海上自衛隊や海上保安庁では潜水士という資格は必要となりますね。労働安全衛生法によって、潜水作業に従事する際には取得が必要であるとされています。さて、この国家資格はどのように取得するのでしょうか。
<資格要件>
なし。満18以上ならだれでも受験できます。
<試験科目>
・潜水業務
・送気、潜降及び浮上
・高気圧障害
・関係法令
受験料は7000円で、試験は学科のみとなっています。さらに、合格率は80%となっており、比較的取得しやすい資格になっています。実技試験がないので、海上保安庁や海上自衛隊では独自に実技訓練を実施しています。ドラマや映画などでみる潜水士訓練などはこの部分に該当するんですね。ちなみに、日本ではダイビングスクールで発行される「Cカード」というものがあります。実はこれの方が潜水の技能を示すには有効だとされています。しかも、潜水士の資格を持っているだけでは趣味としてのスキューバダイビングなどはできないので注意が必要です。仕事としても趣味としてもダイビングをしていくのなら、Cカードの取得が必要となります。少し横道に逸れますが、Cカードについてもご紹介しておきましょう。
Cカードについて
潜水士が国家資格であるのに対して、Cカードは民間が発行する民間資格となります。基本的には、スキューバダイビングなどの趣味で潜水を行なう人が取る資格ではありますが、ダイビングは非常に危険を伴い、正しい知識と技能がなければ事故につながることもあるため、ダイビングを行なう際にはあった方がいい資格とされています。日本ではCカードを持たないからと言ってダイビングを禁止するというような法律はありません。ただし、事故を未然に防ぐという観点からスキューバダイビングのサービスを提供する側が、利用者にCカードの提示を求めるというのは一般的となっています。Cカードにはいくつかのランクが設けられていて、ランクに応じて取得者の技術力を示すというようになっています。
<取得方法>
基本的にはダイビングショップで開催されているCカード講習に参加して、試験に合格することでカードを取得することができます。ちなみに、お店を選ぶときにはダイビングショップの所属している指導団体を確認するとよいです。様々な指導団体がありますが、中でも「PADI(パディ)」は正解的に有名な団体となります。この指導団体によって、何か変わるかといと特に気にする必要はありませんが、有名なところでとると安心感がありますよね。ちなみに他には、「NAUI(ナウイ)」「CMAS(クマス・シーマス)」「SSI(エスエスアイ)」「BSAC(ビーエスエーシー)」
Cカードの取得は、大体3日程度の日数を要します。予算はショップや含まれる料金によって異なりますが、大体30~50万円ほどです。料金に驚いた方もいると思いますが、これには指導料金や講習費の他に機材レンタル料、施設利用料、教材費用、申請料などすべてが含まれています。Cカードを取得しようとすると、総額これくらいかかるということを覚えておきましょう。また、取得したい指導団体やランクによっても異なりますのでしっかり調べるようにしましょう。
<取得の流れ>
・基本的知識、マナーなどの講習
・プールや海などでの実習
・本格的な海洋実習
・学科試験
これらをパスすることで、Cカードを取得することができます。
潜水士と建築業界
建築と聞くと陸上のイメージが強いですが、実は潜水士の資格を持つ人の多くが建築業界に籍を置いているのも事実です。長時間水中で作業するため、陸上とはちがう大変さがありますが年収が比較的高いのも魅力だとされています。基本的には600~700万円となっていて、ベテランともなると1000万円を超える人もいるのだとか。その分、常に危険はつきまといます。水中作業はAI化されていくという見方もありますが、細かい人は変わらず人の手で行っていかなければなりません。資格取得者も多いわけではないので、実は穴場の仕事なのかもしれないですね。
まとめ
建築の世界はもはや陸上だけでなく、水中にまで広がっていくことは間違いないですね。こうした現場で働きたいと思った時には、やはり海洋学や海洋工学などを専攻すると強いと思いますが、まずは潜水士などの資格を目指すところから始めても良いかもしれないですね。今後、水中建築に興味を持ってその道に進もうと考える場合は、最終的に必要な建築に関する資格(特別教育などによる取得)と合わせて必ず潜水士の資格が必要となることは覚えておきましょう。