慢性的な人手不足とされている建設業界では、最近外国人労働者の受け入れが進んでいるという話が出てきています。もちろんこれは、建設業に限った話ではないのですが、そもそも日本における外国人労働者の受け入れとはどういうシステムで成り立っているのでしょうか?今回は、建設業に関わる外国人労働者についての情報をまとめてみました!
そもそも外国人労働者とは?
目次
現在、日本で働く外国人労働者は146万人を超えたと言われています。そもそも、日本における外国人労働者とは、どういうシステムなのでしょうか?
外国人が、日本で働くためには基本的に就労ビザというものが必要となります。これを取得した外国人は、日本で働くことができるのです。就労ビザを取得すると、日本での在留資格を得ることができますが、一方で在留期間というのも定められることになります。この期間を超えて、日本で働くことはできません。実は、これまでの制度では外国人労働者が建設業に関わることはほとんどなかったのですが、2019年追加された新たな在留資格によって、日本での建設業などの単純労働への従事が認められるようになり、建設業での外国人労働者の雇用が増えてきたと考えられます。
特定技能とは
2019年4月に、新しく認められた在留資格は「特定技能」と区分されます。これは、あらゆる業界での労働者不足を補う目的で新設されたものです。実は、よく聞く技能実習生というのは法律によって週28時間を超えたアルバイトや単純労働はできない仕組みでした。元々この制度は、日本の技術を発展途上国などへ伝えるためのもので、知識・技能の伝達が目的のため、労働力としては考えていなかったのです。ところが、日本は外国人の手を必要とするほど労働力の減少に困っており、なんとかしなければならにとして、新設されたのが「特定技能」です。これは、完全に労働力確保のための在留資格になります。外国人労働者がこの資格を得るためには、要件を満たすと同時に特定技能評価試験に合格するかもしくは技能実習2号を修了する必要があります。
特定技能評価試験とは
職種ごとにつくられた試験で、技能と日本語能力をはかるためのものです。この試験は、国外で実施されるもので、現在は下記の9か国で実施されています。
・ベトナム
・フィリピン
・カンボジア
・中国
・インドネシア
・タイ
・ミャンマー
・ネパール
・モンゴル
技能実習2号の修了者が主
試験に合格するほかに、技能実習2号を修了した外国人労働者も要件を満たすこととなります。技能実習生としては、週28時間未満しか働くことはできませんでしたが、要件を満たして在留資格を取得することができれば、本格的に労働者として働くことができるようになります。ちなみに、特定技能の創設から5年の間は、受け入れる外国人労働者の45%がこの技能実習2号を修了した者になるという試算が出されています。
外国人労働者の社会保険はどうなるの?
さて、外国人労働者というのはあくまで労働のためにビザを取得している外国籍の人たちのことなので、当然日本国籍ではありません。この場合、外国人労働者の社会保険はどうなるのでしょうか?
実は、外国人労働者も日本人労働者と同に用に健康保険や厚生年金保険などの社会保険へ加入させる義務があります。これは、外国人労働者が働く事業所が、社会保険適用の事業所であれば発生する義務です。さらに、事業所で社会保険に加入しない場合は個人で国民保険に加入することができます。つまり、外国人労働者も、同じように社会保険料を支払う必要があるということです。ただし、この場合は正規の手続きを踏んだ外国人労働者に限った話であって、不法滞在者はこれに該当しません。
建設業界はなぜそんなに人手不足なの?
さて、話を建設業に戻します。この「特定技能」という制度の新設の裏に、各業界の著しい労働力不足があります。この各業界の中に建設業も含まれるのですが、建設業界はなぜそんなに人手不足に陥っているのでしょうか?
一つは、今年開催予定だった東京オリンピックという一時的なものがあります。東京オリンピック開催に向けて、ここ数年で建設業の仕事が一気に増えたため、その分人手が足りなくなったという見方もあります。では、オリンピックが落ち着けば人手はいらなくなるのでしょうか?そうではないのです。建設業界は、一時的なオリンピック以外に、慢性的な人手不足の問題を抱えているのです。それが、下記です。
・建設投資の減少によって、建設関係企業が倒産したこと。
・技術者の高齢化による離職、減少。
・建設業の待遇改善が進まないことによる入職者の減少。
要するに、少子高齢化の影響をモロに受けているのです。加えて、建設業は危険を伴う重大な仕事であるにも関わらず、待遇があまり良くないという実態があります。これを改善するために、政府は様々な取り組みを行っていますが、効果はいま一つです。このようにして、建設業界は人手不足に陥っているのです。
外国人労働者の雇用問題
先ほど、外国人労働者は在留資格が必要であることに触れました。さらに、技能実習生は週28時間未満の労働しか認められていません。しかし、日本の企業はこういったきまりを無視して、外国人労働者を低賃金で働かせて、しかも長時間拘束している場合もあるのです。さらに、非人道・差別的な扱いをするなど、道徳にかけたニュースを目にすることもあります。これは、日本人側の問題で、雇用する企業が悪質なケースがほとんどです。しかも、最近はコロナの影響を受けて、不当解雇を受けた外国人労働者が悲鳴を上げているニュースも目にします。外国人労働者というのは、ある特定の地区に固まって存在していることが多く、こうした不当な扱いを受けている外国人がある特定の地域にたくさん存在していることは言うまでもありません。
一方で、この外国人労働者の生活スタイルやマナーが問題になることもあります。元々、日本とはちがう文化の中で生活してきた人たちですから、日本の文化に慣れない部分はあると思いますが、近隣住民が不満を持つパターンもあります。
また、言語的な問題からコミュニケーションが難しく、雇用側も苦労することもあるでしょう。
外国人労働者雇用のメリットとは
こうした問題を孕みながらも、外国人労働者を雇用するのには何かメリットがあるのでしょうか?
それは、日本では少ない若い労働者をたくさん確保することができるということです。日本では少子高齢化の問題があって、若くて優秀な人材はかなり希少となっています。絶対数が減っているので当然のことです。一方で、日本での就労ビザを取得できる外国人というのは、非常に優秀なケースが多く日本語もそこそこできます。こうした若くて優秀な人材は、企業に潤いを与えることでしょう。
さらに、外国人とのつながりは海外進出の手がかりにもなります。日本の建設技術は、世界でも評価の高いものですから、こうしたつながりを通してグローバルに展開することも企業のメリットとなります。
まとめ
建設業界では今、外国人労働者が増えてきています。雇用する側は、様々な問題をしっかり受け止めつつも企業の成長と発展のために積極的に取り入れていく必要があります。そのためには、まず関連する制度をしっかり把握する必要があります。外国人労働者の雇用を斡旋する専門的な会社もありますので、興味があればそういったところを利用してみると良いかもしれません。