建築現場の働き方改革が進んでいるという話に触れましたが、その中でも給与水準の低さが問題点としてあがっていました。これに対して、建設キャリアアップシステムというシステムが導入されたのですが、これについて今回は詳しくご紹介していこうと思います。
建設キャリアップシステムの導入背景
目次
これまでも、建築業は人々の暮らしに必要不可欠な大事な仕事であることを触れてきました。ところが、従事する人たちは給与水準が低い上に、労働時間が長く、やりがいのある仕事である一方で魅力が半減してしまっています。また、この業界では、30歳未満の従事者は約10%しかいなく、今後の労働者の確保が急務となっています。このシステムを導入することで、建築業界において優秀な人材を確保し給与設計を見直すことで、若い人たちの入職を促していこうというのが背景の一部にあります。
建設キャリアアップシステムとは?
このシステムは2019年4月より運用が開始されているシステムです。建築現場で働く技能者の資格や経歴をキャリアップカードに登録し、そのカードを現場のカードリーダーに読み込ませることで、勤怠管理もできるようになっています。目標としては、導入から5年間で従事者すべてが登録できるようにするとのことで、都市部ではどんどん導入が進んでいます。
さて、このカード、どのように給与設計と関わってくるのでしょうか?
従事者は将来に不安を抱えていた
建築業界では、給与が低いことや作業がきついことの他に、雇用が不安定であることや将来が不透明であることが従事者の不安として割合が大きかったのです。キャリアアップカートには、従事者の持っている技能資格や経験などが蓄積されていくことになります。さらに、このデータを基に能力を4段階に分類して評価付けをする制度も含まれています。評価4ともなればゴールドカードを得ることができ、収入査定にも影響してくるわけです。そして、このカードのデータはもちろん転職先でも有効ですので、これまでよりも転職のハードルが下がるのです。また、女性が出産や子育てで休んでも、キャリアはきんちと引き継ぐことができるので、復帰の難易度も下がります。
事業者にとってもメリットがある
システムの利用料として、事業者は年単位で1IDごとに利用料を支払わなければなりません。こうした部分が、事業者にとってはマイナスポイントかもしれませんが、従事者の現場の入場管理や勤怠管理を、カードリーダー一つあれば管理することができるようになるため、大幅な業務の効率化を図ることができます。
キャリアアップシステムの登録について
2020年6月末時点で、システムの登録者数は全国で29万人程度となっています。就業人口が330万人ですから、まだまだ登録が必要なことがわかりますね。このシステムに登録方法は、事業者としての登録と、技能者としての登録の2種類が存在します。
<事業者登録>
現場の就業履歴や勤怠管理に活用することができ、従事者の経歴を見ることができます。
詳しくは、PDFをご覧いただくとわかりますが、必要な書類があります。
建設業許可あり⇒建設業許可証または建設業許可通知書
建設業許可なし(法人)⇒事業税の確定申告書または納税証明書と履歴事項全証明書
建設業許可あり(個人・一人親方)⇒納税証明書または所得税の確定申告書または個人事業の開始届
https://www.ccus.jp/files/pam/jigyousya_touroku_pam_a4.pdf
自分で登録する場合は、インターネット・郵送・窓口の3種類から選ぶことができます。代行申請もすることができます。
<技能者登録>
技能者登録は、技能者個人の情報をカードに収める登録方法です。必要なものは、
・本人情報(氏名・生年月日・性別・職種・国籍・住所・顔写真)
※本人確認書類の提出による確認があります。
・保有資格(保有資格・研修受講履歴・表彰実績)
※資格証明書や免許証の確認があります。
・社会保険加入状況(社会保険加入状況・労災保険特別加入状況・退職金共済制度への加入状況)
※保険証や建退共手帳などで確認されます。
https://www.ccus.jp/files/pam/ginou_touroku_a4.pdf
こちらもインターネット・郵送・窓口の3種類の申請方法から選ぶか、代理申請が可能です。自分で登録する場合は、インターネット申請が最も登録料が安く抑えることができます。
対象技能職種について
建築業界の技能者と言っても多岐にわたりますよね。自分が従事している職種は、対象技能者なのだろうか?と疑問に感じる方もいらっしゃると思います。こちらのPDFをご覧いただくと、技能職種の一覧を確認することができますので、ぜひご覧になってみてください。
https://www.ccus.jp/files/documents/downloads/code_a4.pdf
こちらを見るとわかるのですが、このカードにはこういった職種経歴や経験だけでなく、受賞した賞も登録することができるんですね。このデータを見れば、その技能者がどれほどのスキルを持っているのか一目でわかるのが便利なところです。
まとめ
これからの建築業界を担う若者たちが、明るい将来を描くことができるような労働環境の実現に向けて、まずはこうしたシステムの登録から始めるとよさそうですね。