建築現場の働き方改革、働き方改革加速プログラムとは
最近、どの業界でも頻繁に聞くようになった「働き方改革」というワードは、みなさん一度は耳にしたことがあるかと思います。すでに、取り組みが進んでいるという職場もあれば、うちは全然変わらない!と感じている方もいらっしゃるのではないでしょうか。こうした社会の動きの中で、建築業界も「働き方改革」を進めています。今回は、建築現場の働き方改革について詳しくご紹介していこうと思います。
働き方改革ってなに?
目次
日本は、少し前から大きく2点の社会問題に直面しています。
・少子高齢化による働き手の減少。
・育児や介護との両立などによる、働き方の多様化。
これまでの日本の企業や現場では、とにかくたくさん働く!ことが推進されてきましたし、それが良いとされてきました。しかし、働き手の減少によって、単純に個々がさばかなければならない仕事量や負担が増大するとともに、共働きの増加により介護や育児の両立が必要となるケースが増え、これまでの働き方では立ち行かなくなってきました。こうした問題を受けて、厚生労働省では「働き方改革を推進するための関係法律の整備」を進めているところなのです。内容としては、簡単に以下のようになります。
・長時間労働の是正。
・雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保。
・柔軟な働き方がしやすい環境整備。
・ダイバーシティの推進。
・賃金引上げ、労働生産性向上。
・再就職支援、人材育成。
・ハラスメント防止対策。
このようにカテゴライズされ、この中で様々な取り組みが行われているところです。特に、コロナの影響を受けて、テレワーク環境の整備は大幅に進んだのではないでしょうか。とは言え、建築現場で働く人たちにとっては、何がテレワークだ!という感じかもしれませんね。
建築現場の労働環境の問題点とは?
さて、建築現場の場合は、これまでの働き方でどんな問題点があったでしょうか?
・長時間労働。
・給与や社会保険の問題。
・生産性。
先ほど、労働の担い手が減少をしていることはご説明しました。特に、建築業界では現在の労働者の高齢化により、10年後には大幅に労働者が減少することが見込まれています。特に体を使う建築業では、高齢者の再任用などもはばかられるので、こうした労働者人口減少の影響をもろに受けてしまいます。また、この業界は基本的に労働時間が他の業種と比べて長いことがわかっています。その差は、1か月で330時間ということが明らかになりました。週休2日制という基本的な制度すら取り入れられていないのが現状です。そして一番の問題点は、給与水準の低さです。このような状況では、新たな担い手を引き込むことさえ難しいですよね。そこで、国土交通省によってこれらの問題を是正するためのプログラムが発表されました。
建築業働き方改革加速化プログラム
国土交通省は、建築業界の働き方改革を急務として、2018年3月20日に「働き方改革加速プログラム」を発表しました。
<週休2日制導入>
今さら!という感覚もありますが、平均週休1日という労働環境の建設業界では、週休2日制の導入が長時間労働改善の大きな一手となります。週休2日制を導入し、実施するために発生する労務費や賃料、現場管理費などは、所定の手続きを踏むことで必要経費として計上できるようになります。
建築業が取り組む働き方改革
<工期のガイドライン設定>
これも、長時間労働の是正に関わることですが、適切な工期を設定するようガイドラインに従うよう協力を要請しています。
<給与設計の見直し>
建設キャリアアップシステムというものがあり、これをしっかり活用するよう協力を要請しています。このシステムについては、別記事にて詳細をご説明していきます。
<社会保険加入の推進>
これまた、今さら!と感じますが、建築業界の社会保険の加入率は他の業界と比べて低いものとなっています。社会保険に加入していなければ、いざという時に医療や年金などで補償を受けられないことになってしまいます。こうした状況では、入職者を増やすことが難しいですよね。これを是正するための取り組みが、国土交通省によって行われており、これによって加入率は上がってきています。
<ICT、ITの導入>
これまで、ドローンやタブレットなどを用いた先進的な建築技術をご紹介してきましたが、こうした取り組みを推進しています。これにより、生産性が向上し従事者の長時間労働の是正にもつながってきます。
<時間外労働の規制>
建築現場での時間外労働の上限規制が、2024年か2025年から適用されるようになっています。これについても、別記事で詳しくご紹介することにします。
まとめ
今回は建築業界において、推進される働き方改革について、概要をご説明しましたが。一方で、こんな風に言われている中でも、そんなに環境は変わってないよと思われる方もいらっしゃると思います。「言うは易く行うは難し」ということで、まだまだ現場では浸透していないのが現状ですね。これから、現場が変わっていくことを願うばかりです。