塗装の専門知識と技術を示す塗装技能士とは?
塗装工は専門性が高い仕事で、専門的な技術が必要となりますよね。基本的には、塗装工になるために必要な資格はありませんが、専門性を示すことのできる資格はあります。今回は、そういった塗装工の資格に着目してご紹介していこうと思います。
そもそも塗装はなんのために行うの?
塗装の種類は様々あることを以前触れましたが、そもそも塗装というのは一体なんのために行うのか、みなさんは知っていますか?ただの、色付けやデザイン性のためではありません。例えば、建物の外壁の場合を考えてみましょう。今は、サイディング材と呼ばれる外壁が多くなっていますが、サイディング材も年月が経てば劣化し、元々の塗装が剥がれてしまうことがあります。そうした塗装の剥がれから、雨水などが侵入することによって、サイディング材に穴が空いたり錆びてしまったりしますよね。そもそも塗装というのは、そういった素材を守るために施されているコーティングなのです。これが剥がれてしまったら、当然修理する必要があります。このように、塗装対象の耐久度を上げるために塗装というのは行われているのです。自動車などならもっと想像しやすいですよね。金属を、なんの加工もせずに走らせたら、すぐに錆びて劣化してしまうでしょう。対象物の耐久度を上げて、長持ちさせるための加工、それが塗装の役割の一つなのです。
塗装工になるには
最初にも言いましたが、塗装工には特別な資格は必要ありません。塗装を行う会社に就職して、そのノウハウを習得していけば誰でも塗装工になることができます。もちろん、塗装を専門に学ぶことができる専門学校や大学もあります。こうした学校を経て、塗装関係の会社に就職するメリットは、基本的な知識と技術を既に身に着けた状態でのスタートになるので、給料が高卒よりも高かったり、即戦力として扱ってもらえたりすることでしょう。もちろん、工業高校や高等専門学校などによっては、塗装に関する専門学科があることもありますので、そういった学科を卒業すると就職もしやすくなりますね。学校によって取得することのできる資格は異なりますが、様々な関連資格を取得することもできます。もし将来、塗装工になりたいという気持ちが強いのであれば、こうした学校を調べてみるのも面白いかもしれません。
塗装技能士
さて、今回の本題となります。塗装関連の資格についてご紹介していきます。塗装技能士は、技能士と呼ばれる国家資格の一つです。この資格は、1級から3級まであって、それぞれ専門性の高さが異なります。また、塗装技能士の中でも分類があり、試験は下記の5つの分野に分かれています。
・木工塗装作業
・建築塗装作業
・金属塗装作業
・噴霧塗装作業
・鋼橋塗装作業
<受検資格>
学歴や既得資格によって異なりますが、実務経験のみの場合は下記のようになります。
1級…実務経験7年以上
2級…実務経験2年以上
3級…実務経験6か月以上
<試験内容>
試験内容は等級によって異なります。
学科
1級・2級
・塗装一般
・材料
・色彩
・関係法規
・安全衛生
・選択科目(木工塗装法、建築塗装法、金属塗装法、鋼橋塗装法、噴霧塗装法)
3級
・塗装一般
・材料
・安全衛生
・選択科目(木工塗装法、金属塗装法)
実技
実技試験は作業職種と等級によって異なります。
<木工塗装作業>
1級
2枚の見本板及び2枚の見本紙に基づいて調色し、3枚の合板に下記の塗装を行う。
・刷毛塗りの着色仕上げ後、刷毛塗り2回仕上げ。
・刷毛塗り及び吹付け塗りにより、不透明塗装仕上げ。
・さん付きの合板に、刷毛塗りの着色仕上げ後、その一部に吹付け塗りを行う。
2級
2枚の見本板に基づいて調色し、2枚の合板に下記の塗装を行う。
・さん付きの合板に、刷毛塗り着色仕上げ後、その一部に吹付け塗り。
・刷毛塗りの着色仕上げ後、刷毛塗り2回仕上げ。
<建築塗装作業>
1級
・ラワン合板に、合成樹脂エマルション系複層塗材塗装(凸部処理を含む)を行う。
・ラワン合板に、刷毛によりつや有合成樹脂エマルションペイント(2回塗り)塗装並びにローラーブラシにより合成樹脂エマルションペイント塗装(パテ地付けを含む。)を行う。
・吹付け塗装によるスプレーパターン作成を行う。
2級
・ラワン合板に、合成樹脂エマルション系複層塗材塗装を行う。
・ラワン合板に、刷毛によりつや有合成樹脂エマルションペイント(2回塗り)塗装並びにローラーブラシにより合成樹脂エマルションペイント塗装(パテ地付けを含む。)を行う。
・吹付け塗装によるスプレーパターン作成を行う。
<金属塗装作業>
1級
・鋼板で製作した角筒(200mm×100mm×450mm)の外面に、下塗り及びパテ付けを行う。
・見本板に基づいて調色したラッカーエナメル被塗装物に、与えられたメタリック塗装で吹付け塗り仕上げする。
2級
・鋼板で製作した角筒(200mm×100mm×450mm)の外面に、下塗り及びパテ付けを行う。
・見本板に基づいて調色したものを、被塗装物に吹付け塗り仕上げする。
<噴霧塗装作業>
1級
軟鋼板をV形にした被塗装物に、エアスプレーガンによる噴霧塗装と、エアレス及び静電による噴霧塗装の3作業を行う。
2級
軟鋼板をV形にした被塗装物に、エアスプレーガンによる噴霧塗装と、エアレス又は静電のいずれかによる噴霧塗装の2作業を行う。
<鋼橋塗装作業>
1級
・電動工具及び手工具による旧塗膜の除去
・塗料の粘度調整
・旧塗膜を除去した面の塗装
・塗膜厚の測定
2級
・電動工具及び手工具による旧塗膜の除去
・塗料の粘度調整
・旧塗膜を除去した面の塗装
実技試験は、減点方式がとられており、100点満点中60点以上を取ることができれば合格となります。試験では、使用する道具が指定されたり図面を読み取ったりする必要があるので、塗装工として現場で活躍しているからといって、慣れない作業も含まれる可能性があります。このため、この資格を目指す職人さんたちは、合格に向けて自主的に練習に励んでいるのです。しかも、道具は指定されていますが、この道具は自分で用意する必要があるのです!他の技能士の試験とはちがって、そういった下準備も必要になりますね。ただ、使い慣れた道具を使うことができるのは、有難いことではあります。ちなみに、試験の中には、5時間という長い試験時間のものもあります。当然、途中で休憩をとったりトイレに行ったりしますよね。その際には、作業場をきちんと片付けてから離席しなければならないというルールも存在します。こうした部分が、減点されないように気を付けたいところですね。
こちらの動画では、1級塗装技能士の実技練習風景をみることができます。この試験に挑戦した経験がある先輩がいると、心強いかもしれませんね。練習には、場所や材料が必要になりますし、その分の費用もかかります。こうした費用を負担してくれる会社もありますので、就職する際にはそういった条件も確認しておくと良いかもしれません。
まとめ
今回は、塗装工に関連する資格である「塗装技能士」についてご紹介しましたが、いかがだったでしょうか?前回、塗装工の仕事もロボットに代わられるかもしれないような技術をご紹介しました。しかし、1級塗装技能士の実技試験練習動画を観ると、ロボットには到底できないのではないかと思われるような技術も登場します。こうした人の手による技というのも、しっかり受け継いでいってほしいと願います。