ダムを管理するにも資格が必要!ダム管理技士とは

ダム管理技士

2018年に起きた西日本豪雨を皮切りに、最近では雨による水害について注目が集まっています。もちろん、それまでにもこうした水害はあったのですが、最近は集中豪雨が発生する機会がなんとなく増えている気もしますね。こうした水害の際に必ず話題となるのが「ダム」です。しかしこれについて、詳しく知っているのは一部のマニアくらいでしょう。今回は数回を通して、ダムの歴史や意義、ダムに関わる仕事や建設についてご紹介していきたいと思います。今回は、ダムに関わる仕事と、その資格について詳しく見ていきましょう!

 

ダムの役割は流れる水の量を調節すること

そもそもダムって何なの?というところから説明していきます。通常、川は山から海に向かって流れていて、雨が降ることによって水量が増加します。この水量の増加に関わるのがダムなのです。川が急に増水すると、川の付近で暮らしている人たちは川が氾濫するなどして、大変困りますよね。そこで、いつも一定量の水が流れるように水量を調節するのがダムの役割なのです。わたしたちが日ごろ使っている水道の蛇口のような役割だと考えていただければイメージしやすいでしょう。ダムを操作することで、水を流したり水を止めたりするわけです。これが、基本的なダムの役割です。こうした役割を果たしているのはダムだけではありません。例えば、水門・堰(せき)と呼ばれる建築物も流れる水の量を調節することができます。

さて、ダムの役割はこれだけに留まりません。水害の際に水の量を調節するのはもちろんですが、雨が降らない日が続いて川の水が減ってしまったときに、水を流すことで川の環境を保持することもダムの役割の一つです。また、わたしたちの生活に必要な水を送り出してくれたり、ダムのはたらきによって流れる水の力を利用し発電したりと、わたしたちの生活に密接に関わっているのです。

さて、このダムは一体どういう人たちによって動かされているのでしょうか。

長野県松本市 稲核ダム

ダムに関わる仕事

ダムの付近には、ダム管理所と呼ばれる施設があります。これは、都道府県や国土交通省、電力会社などが設置して、そこで働く人たちが管理をしています。こうした管理に関わる仕事に関係する資格に、「ダム管理技士」と「ダム管理技術者」というものがあります。今度はこれを詳しく見ていきましょう。

 

ダム管理技士とは

この資格は、ダム管理に必要な知識や技術を持っていることを証明する資格となります。国土交通省の認定を受けた水源環境整備センターによって試験が行われており、資格を取得することでダムの管理に携わることができます。この資格を取得するためには実務経験が必要です。つまり、ある程度管理所で経験を積んだ人が取得を許される資格で、資格を持たない職員よりも責任が付随する仕事を任されることになるわけです。このため、年収がアップしたり手当がついたりします。さらに、この資格はダム管理と言っていますが、「河川及びダムの管理」業務を主としています。ですから、ダムだけではなく河川の管理業務の仕事を任される場合もあるということですね。

 

ダム管理技士になるには

ダム管理技士になるには、(財)水源地環境センターが行っているダム管理し試験を受けて合格する必要があります。この資格を取得すると、ダムの管理主任技術者となるための必要実務経験年数が短縮されることとなります。つまり、ダム管理で活躍していきたいと考えている人の登竜門となるわけです。

 

<受験資格>

年齢:満21~65歳

実務経験年数
学歴 土木工学に関する課程を修了し卒業した者 その他
大学・短大・高専 2年以上 3年以上
高校 3年以上 4年以上
上記以外 8年以上(うち、ダム管理業務が3年以上)

この実務経験というのは、「河川及びダムの管理」のことを指します。この内容は、

・河川及びダムの管理

・河川、砂防及びダムの設計、工事、監督

・河川、砂防及びダムの計画、調査

以上の業務のことです。ダムを管理するだけでなく、ダムの建設に関わる人も資格取得の機会を得ることができるんですね。

 

<試験内容>

学科試験

・ダムに関する法律制度に関する事項

・ダム及びその附帯設備並びにダムを操作するために必要な機械、器具等に関する事項

・ダム貯水池における水質汚濁、字滑る、堆砂等に対する対策に関する事項

・ダムを操作するために必要な気象及び水象に関する情報の収集及び解析並びにダムの操作に関する事項

(点検に係わる項目を含む)

 

実技試験

学科試験に合格した者を対象として行われます。

ダム管理用シミュレータによる洪水時などのダムの操作、管理に必要な予測計算、判断力などについて3日間をかけて総合的に審査されます。

 

受験料

学科試験・・・10,000円(税込)

実技試験・・・47,000円(税込)

 

学科・実技ともに70%以上の得点率で合格することができるため、比較的合格しやすくなっています。ダムや河川に関わる仕事に興味がある人は、まず押さえておきたい資格ですね。

 

ダム管理主任技術者とは

河川法の定めによって、「利水ダム」に置かれる技術主任者(国家資格)のことを指します。ダムには実はいくつか分類があります。利水ダムとは、治水目的を持たないダムのことを指します。この場合、用途は水力発電や灌漑などに使われる水の確保のために、設置されるダムのことになります。それも、高さが15メートル以上です。仕事としては、ダムの維持・操作・その他の管理を行っていきます。この資格は、先ほども触れたように「ダム管理技士」の上位資格であると言えます。研修は、(財)全国建設研修センターによって行われ、研修を修了し学科・実技療法の試験に合格する必要があります。

 

ダム管理主任技術者になるには

<受講資格>

こちらも、基本的には実務経験が必要となります。

 

・大学・高専の卒業者で土木に関する課程を修了している者・・・3年以上の実務経験

・高校の卒業者で土木に関する課程を修了している者・・・5年以上の実務経験

・国土交通大臣の定める要件を満たし、ダム管理技士試験に合格した者。

・国土交通大臣の定める要件を満たし、ダム管理主任技術者研修を修了した者。

・上記以外で、国土交通大臣が定める要件を満たすもの。※細かい規定あり。

 

<研修内容>

学科

・気象情報と利用

・ダム管理法規

・ダム管理業務諸規定、ダム基本操作

・水分観測、流出予測

・ダムの水理構造物機能、管理、堆砂

・貯水池管理

 

実技

ダム操作のシミュレータなどを用いた実技訓練

 

学科・実技それぞれの最後には試験(効果測定)が行われ、これに合格した者がダム管理主任技術者の資格を得ることができます。費用は、学科・実技合わせて18万円程度となっており、開催は東京都の同センターとなりますので、遠方からくる場合は宿泊費がかかります。

この仕事は、非常に責任が大きな仕事となります。ダムの放水量を管理する仕事があり、重要な判断を任される立場であるため、適切な判断力が必要となるでしょう。少し判断を間違えれば重大な事故につながります。それだけ責任が重い立場に身を置くことになることを心構えておきましょう。

 

ダム水路主任技術者

さて、こちらの資格は管轄が経済産業省となり、電気事業法を根拠とした資格となります。基本的には、水力発電所の水力設備に関わる仕事となりますが、ダムに関わるということで、ご紹介させていただきます。水力設備というのに、ダムが含まれますが、ほかに導水路やサージタンク・水圧管路等を含み、これの工事・維持・運用に係る保安と監督を行うために必要な知識と技術を身につけていることを証明する資格となります。水力発電の際の安全確保と、安定した電気供給のために必要不可欠な資格です。主として発電所に関わるため、電気事業法が根拠となるのですね。

 

ダム水路主任技術者になるには

試験の実施はなく、学歴と実務経験の資格要件を満たしている場合に交付されます。

 

<資格要件>

下記の表をご覧ください。

学歴 1種 2種
大学(土木工学)卒 5(3) [3]
大学卒 9(3) 5[3]
短大・高専(土木工学)卒 6(4) [3]
短大・高専卒 10(4) 5[3]
高校(土木工学)卒 10(5) 5[3]
高校卒 14(5) 7[3]
中学卒 20(10) 12[8]

※カッコなしの数字は、水力設備又は水力設備に相当する発電用以外の工事、維持または運用に係る経験年数。( )や[ ]内の経験年数を含めることが条件。

( )内数字・・・高さ15m以上の発電用ダムの工事、維持又は運用に係る経験年数。

[ ]内数字・・・水力設備の工事、維持又は運用に係る経験年数。

 

免許状の申請料は6600円となっています。

ダム管理技士とダム管理主任技術者はダムの運営に関わる仕事、ダム水路主任技術者はダムと入っていますが基本的には発電所が主体となっていて、発電に関わる仕事という風に考えてもらうとわかりやすいかと思います。なお、ダム水路主任技術者については、発電規模によって許可主任技術者という特例が定められています。2000kW以下の水力発電所の場合は、ご紹介した免許状を持たない者の中からダム水路主任技術者を選任することができるという特例です。この場合、「ダム水路主任技術者講習」を受講する必要があります。最後に、その講習の内容についてご紹介したいと思います。

 

ダム水路主任技術者講習の内容

ちなみに、こちらの講習を受ける際には学歴などの要件を満たしている必要があり、これは発電所の発電量によって変わります。今回はこちらの紹介は割愛させていただきます。

<学科>

・水力発電設備の保安に関する法令

・水力発電所の仕組み、技術基準

・水文

・気象および防災

・水理学の基礎

・コンクリート構造物の設計と管理

・水力発電所の設計

・ダム水路主任技術者の保安監督業務

 

費用は10~13万円程度となっています。

 

まとめ

ダムに関わる仕事でも、ダム自体の管理に関わることから発電の分野に至るまで幅広いことがわかりましたね。将来的にダム管理技術主任者を目指すならダム管理技士の資格を取るのが無難でしょう。大学までに、土木工学を専攻しておくとより近道ですね。

関連記事

コメントは利用できません。

ピックアップ記事

  1. 【ウッドショックとは何か?】 ウッドショックとは、木材価格の急激な上昇と供給不足によって引き起こさ…
ページ上部へ戻る