【最新の建築】ダム建設で起きるイノベーション
前回は、ダムの建設の豪雨における役割とダム建設問題に触れ、建築業界の話から少し逸れることとなりました。今回は、ダム建設の技術も日々進化しているということで、ダムの建設に使われている最新技術についてお伝えしていこうと思います!
ダムの建設の歴史
目次
まずは、そもそもダムがどのようにつくられるかというところからお話ししなければなりません。ダム建設は、非常に長い工程を経て完成に導かれていきます。前回ご紹介した八ッ場ダムはその建設計画の立ち上げから、完成まで実に68年の歳月が流れています。当然、この途中でも技術は進歩していったに違いありません。規模によって異なりますが、通常ダムの建設には10~20年の工期が必要とされています。
<ダム建設の流れ>
- 予備調査
基礎資料の収集分析、ダム規模の設定、基本事項の検討・評価
- 実施計画調査
現地調査、水文、地形地質、環境、補償、設計条件の確認、概略設計
- 建設
建設地までの工事用道路や付替道路の建設、代替地・転流工・仮設備などの工事や設置、本体工事、管理設備工事、
- 試験運転
文章にするとあっという間ですが、これを10~20年かけて行っていくので気が遠くなりますね。20歳でこの建設に関わり始めたら、40歳になる頃に完成すると考えると、感慨深いものがあります。現在ではコンクリートを用いたダムが主流となっていて、高さが15メートル以上のものをダムと呼ぶようになっています。その高さに満たないものは、ダムではなく堰堤(えんてい)などと呼ばれます。さて、それではコンクリートが主流になる前は、どのようなものでダムを作っていたのでしょうか。
<ため池の歴史>
日本最初のダムについては、明確にされていませんが灌漑用のため池についての記述は既に『古事記』や『日本書紀』に登場しています。小学校の社会で習ったかと思いますが、日本では渡来人によって土木技術が伝えられました。この技術を用いて、ダムに近いものがつくられていたと推察されます。先ほどご紹介したように、現在は高さ15メートル以上のものをダムといいますが、同様に河川法の規定に該当するダム式ため池として日本で最も古いものは大阪府の狭山池(さやまいけ)だとされています。もちろん改修などはされていますが、現在でも使われているダムです。
<重力式コンクリートダム>
神戸市にある布引五本松ダムは、日本で最初につくられた重力式コンクリートダムだと言われています。1900年につくられた(計画は1887年から)ダムでしたが、これの計画案はイギリス人であるウィリアム・バートンという人によってつくられました。この頃からコンクリートを利用してダムを造られていたということで、コンクリートの歴史もなかなか古いことがわかりますね。重力式コンクリートダムというのは、コンクリート自体の質量を利用してダムの自重を利用して水圧に耐えることができるのが特徴です。このため、大変な量のコンクリートを使用します。また、建設する場所が岩盤などの固い土地でないと建設ができません。一方で非常に頑丈であることから、地震や洪水の多い日本では広く用いられた型式です。現在では、建設できる岩盤を備えた土地が少なくなっており、建設は減少傾向にあります。さて、この重力式コンクリートダムのほかにどんなダムがあるのか、その種類を見ていきましょう。
ダムの種類
<重力式コンクリートダム>
ダム自体の重さで、水を支える構造。横から見ると三角形になっている。硬い地盤のある場所でないと建設できない。とても頑丈。
<アーチ式コンクリートダム>
重力式コンクリートダムよりも、提体が薄く、アーチ型になっている。アーチ型なので、水の力がサイドに分散される。このため、サイドの地盤がしっかりとした岩盤でないと建設できない。
<中空重量式コンクリートダム>
使用するコンクリートを少なく抑えるために、重力式コンクリートダムの内側を空洞にしたもの。強度がやや落ちる。
<バットレスダム>
水の力が加わる壁(止水壁)の部分をバットレスという扶壁で支える形。
<台形CSGダム>
ダムの中身が、掘削して発生した砂や付近で入手した材料で、これにセメントと水を加えることで形成したダム。
<ゾーン型フィルダム>
岩石と土砂を使ってつくられたダム。
<均一型フィルダム>
土を押し固めてつくられるダムで、最も古くからある技術でつくられている。世界最多のダムで、約7割がこのダム。
<表面遮水型ロックフィルダム>
ダムの表面をコンクリートやアスファルトで覆うことで、水を通さないようにしているダム。
ダムには色々な種類があることがわかりますね。コンクリートだけでなく、土や砂・石などを用いて作られる場合もあることがわかりました。
ダム建設中の事故ダム建設の最新技術
ダム建設にはものすごい時間がかかりますよね。しかも、コンクリートも大量に使うので二酸化炭素の排出量も気になりますし、費用だってかかるはずです。当然、ダム開発に携わる人たちはこうしてかかるコストをなんとか抑えようと色々考えています。ダムの建設でも、進歩した建築技術がしっかり生かされているのです。ここでは、いくつかをピックアップしてご紹介していこうと思います。
<タブレット端末を使った環境保全対策>
ダムの建設現場では、その建設地における動植物や自然環境の保全が求められます。要するに、「環境破壊」「環境汚染」にならないように気を付けなければならないのです。これまでは、アナログ的にそれらの写真を撮ったり、位置情報を記録したりしていて、これを記録するにも解析するにも手間と時間がかかっていました。ところが、これをタブレット端末などで管理することによって、写真データをクラウド上で共有し、電子マップ上で位置を記録することによって大幅なコスト削減へつなげたのです。
<自動運転技術で安全性の向上>
ダム建設は、非常に危険を伴い過酷な現場であることが広く知られています。1963年につくられた黒部ダムは、富山県の山奥に位置する水力発電ダムです。当時、電力が不足していたため、しっかりと発電量を確保できる大きなダムを建設しようということになったのです。ところが、この場所はほとんど未開の地ですから、自然との闘いとなります。まず建設地にたどり着くまでに必要なトンネルを掘る作業で事故が起こり、7年間の工事の中で171人の作業従事者が死亡しています。こうしたダム建設時の事故は日本だけでなく、世界各国で後を絶ちません。
これに対して、最新の建築技術は作業員の安全を守り、安心して作業に従事できる環境を実現しました。ケーブルクレーンの自動運転化技術によって、オペレーターは遠隔操作によってケーブルクレーンを操作することが可能となりました。しかも、自動運転なので細かい操作の必要はなく、機械が頑張っているのを監督するだけの仕事となります。それまで人が危険な場所で操作していたことも、こうして人は安全な場所から操作できるようになるだけで、安全性がかなり高まりますよね。
この2つの技術はどちらも、鹿島建設株式会社が実際に使っている最新の技術となります。公式サイトでは非常にたくさんの最新技術が紹介されているので、お時間のある方はぜひ一度見に行ってみてください。
https://www.kajima.co.jp/tech/c_dam/index.html
まとめ
さて、3回にわたり「ダム」について取り上げてきましたが、いかがだったでしょうか。ダムのような大きな建設はそれだけ関わる人も増え、必要となる分野も広くなります。ダムの建設だけとっても、たくさんの知識と技術が集約されていることがわかりますね。